毎年8月12・13日に行われる東海一の荒祭
毎年8月12・13日に行われる焼津神社の大祭は、「東海一の荒祭」として知られており、焼津の人々が心待ちにしているお祭りの一つです。
お祭りに向けて1ヶ月以上の時間を掛け、磨きや補修を行ってから大廻しによって固定された神輿は、「アンエットン」という独特のかけ声とともに神社を朝10時に出発し、焼津市内にある4ヶ所の御旅所に寄り、夜11時頃に神社へ戻ります。神輿渡御の総距離は6.5km程です。
荒祭の見所の一つは、何と言っても勇壮豪快な神輿渡御(行列)ですが、渡御は普段神社の本殿にお祀りされている御祭神を、それぞれの町へお迎えして祭事を行うためにあるのです。
各役割について
神輿の前後には様々な神役の行列が進みます。その中でも特に猿田彦・御神子(いちっこ)・御供捧(おんくささげ)・流鏑馬(やぶさめ)が重要な役とされています。
猿田彦
神輿の通る道に邪悪なものを寄せ付けないために、社宝である猿田彦面を付けて先導する役です。面を付けることから「オメンサン」とも言われています。猿田彦を務める青年は、8月1日から12日まで神社で寝泊まりをし、毎日海に行き身を清めて役に臨みます。
御神子
最後の御旅所で行われる神事で、穢れない姿・所作によって人々の心を清め、神様のお力を授けるための大切な役です。
御供捧
全ての人々を代表して、神様へお供え物を献る大変重要な役で、お祭りに備え祭式(作法)を繰り返し練習します。
流鏑馬
焼津の町に災いの無いことを祈り、青竹で作られた御神矢を掲げ馬で駆ける役です。江戸時代、代々流鏑馬役を務めた村岡家にカネタカさんという流鏑馬の名手がいたことから、今でも流鏑馬役は別名「カネタカ」とも呼ばれます。
- 御神子も御供捧も神様にお仕えする大切な役なので、お清めのために茅萱(ちがや)と和紙で造った輪を身につけます。
荒祭の意味
お祭りの行列は様々な神役が、神様の通る道を何度もお清めしながら進んでいきます。
荒祭は、威勢の良さから荒々しいことだけが注目されがちですが、荒祭の「荒」は「荒っぽい」「暴れる」というような意味ではなく、「素朴」「純粋」「まっさら」な気持ちで神様に向き合うという意味で、先人達の御祭神に向けた純粋で素朴な気持ちにより守り伝えられている祭なのです。
お祭りの衣裳は、白装束といわれ上から下まですべて白を着用します。白は国旗日の丸の白地と同じく清浄を表す色で、お祭りに参加するにあたり、身も心も清らかであることを示しています。
白装束を着る際には、派手な髪形などは慎むべきであることは言うまでもありません。
平成21年にはお祭りの前日に駿河湾地震が発生し、震度6弱の揺れが焼津の町を襲ったことで境内にある灯籠や石積みが倒れ、開催が危ぶまれたことがあります。その際には、焼津の人々が自然と声を掛け合って神社に集まり、重機の準備も間に合わない中、手作業で修繕したことで予定を変更すること無く行えました。
まさに焼津っ子の「荒」が表れた出来事で、こうした人々の気持ちがあるからこそ、現在でも昔ながらの祭事が続けられているのです。
荒祭の運営
荒祭は、一区藤組・二区竹組・三区柳組・四区桜組の四町の祭典委員(青年・中老)の人々によって運営されています。その年当番となる区を「年行司(ねんぎょうじ)」といい、年行司を中心に4町が協力してお祭りが行われているのです。
青年・中老の務めは、準備から神役の選出、当日の運営に至るまで多岐にわたります。
祭典委員は、お祭りの終わった翌月の9月から、次の年行司を中心に1年をかけて話し合いを重ね準備を行っています。
青年・中老の祭典委員をはじめ、獅子木遣りの伝承をはかる獅子木遣り保存会、神輿を固定する大廻しの技術を伝える大廻し保存会、神輿の磨き・修理や御神宝の調製を行う神宝保存会など多くの人々の奉仕によってお祭りは支えられています。
神楽(舞)
8月のお祭りでは3種類の神楽(舞)が、舞姫によって御神前に奉納されます。
乙女の舞 | 小学4年生 6名 |
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浦安の舞 | 小学6年生 6名 |
青垣の舞 | 高校3年生 4名 |
舞姫奉仕希望の方は、社務所にてお申し込みください。(0歳から登録可)
但し、希望者多数の場合は選考となりますので、予めご了承ください。
乙女の舞
浦安の舞
青垣の舞
焼津神社の神輿は、屋根と胴、担ぎ棒が固定されておらず、「大廻し」といわれる麻の縄で締められます。
神輿を担いだ際の衝撃は、大廻しであれば吸収することができますが、金具で固定した場合は耐え切れずに折れてしまうのです。
船上においてロープは、命に関わる重要なものです。止めるべき時はしっかりと固定でき、逆に解く時にはすぐに解けなければ命を落とす危険があります。
大廻しは驚くほど精巧に縛られており、焼津の漁師が命がけで考え磨いたロープワークの技術や知恵が詰まっていることがわかります。
この技術は、社殿の鈴緒の網にも用いられています。
木遣りとは、重い木材などを大勢で掛け声をかけながら運ぶ時などにうたう歌のことで、のちに祭礼の歌にもなり、お祝いの意味をもつようになりました。
荒祭渡御行列の先頭で、歌声やわらかく、華やかな色どりを添えているのが、手古舞衣裳の獅子木遣りの少女達です。
この木遣りは、昔焼津の港より江戸深川へ送られた材木積出しの時に歌われたもので、江戸時代中頃期に祭礼の中に加えられました。
明治40年、焼津出身の見原貞吉さんが、雌雄一対の獅子頭を奉納され、このときから神輿渡御行列の先導をになう「獅子木遣り」として青年に担がれた獅子頭のはこびに合わせて、派手やかに歌いつがれています。
参加対象は小学生以上の女児(練習に参加でき、行進をする脚力があれば学年は問いません)で、6月に入り焼津市全自治会に呼びかけをして募集をします。
お申し込み・お問い合せ
獅子木遣り保存会事務局 | 電話:054-628-2444(焼津神社内) |
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焼津市歴史民俗資料館 | 電話:054-629-6847 |
焼津神社の獅子木遣り動画
「焼津神社の獅子木遣り」を紹介した動画が、ご覧になれます。
地域文化資産ポータル | http://bunkashisan.ne.jp |
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